新聞「日本」には、三面記事がなかったといわれている。三面記事とは、今でいう社会面的記事のことだ。事件、事故、人情話……。新聞の印刷が粗悪で、一枚紙を折っただけの四ページだった時代、三面記事は紙がこすれたり、雨などによってインクがにじんだりしないように、内側の三面に掲載されたことから、そう呼ばれるようになった。
確かに、「日本」は読めば読むほど、社会面的な記事がない。政治・経済、かろうじて文化の記事は載っている。明治35年ごろまでの「日本」を見ると、社会面的な記事は「電報」もしくは「市井くさぐさ」という題で、ごくごく短く載るだけだった。
たとえば、「●門司の虎列拉(コレラ)」と題して北九州の門司港でコレラ患者が出たことや、「臀(尻)切犯人 ■■■(実名報道だが、あえて名前はふせる)昨日取調を受く」というような本当に短い記事だった。
ちなみに、同じ頃、同じ「臀切事件」を扱った東京朝日新聞を見てみる。
きくち