「近衛篤麿日記」(第4巻)pp.244-245.によれば、羯南ら一行は、8月20日は京釜鉄道の起工式に出席している。
京釜鉄道起工式は、京仁鉄道線の永登浦(ソウル駅から南西約8km)で行われた。
ウイッキペディアによれば、京仁鉄道は、当初、アメリカ人モーリスが、朝鮮政府から敷設権を獲得し建設を開始したが、労働争議、支払い争議問題で頓挫した。そこで、建設半ば180万円で日本の澁澤栄一らの京仁鉄道合資会社に売却された。これを澁澤栄一らが完成にこぎつけ、朝鮮半島最初の鉄道となったという。
モーリスは京城=釜山の鉄道敷設権も獲得していたが、資金難のために敷設権を日本が譲り受け、京釜鉄道を設立し、1901年に着工した。羯南らはこの起工式に出席していたことになる。
その後、京釜鉄道は、建設中の1904年に日露戦争が勃発すると、軍事物資の決戦輸送のために突貫工事で建設され、一部河川などはフェリーで輸送する暫定的なものながら1905年に全線開通し、日本の対露戦勝に貢献した(なお、同社は1908年に韓国統監府に売却、清算されている)。
この鉄道は戦略的に大変重要な地位を占めていたこととなり、この起工式典出席は今回の一連の旅行の大きな目玉の一つだったのかもしれない。
しぶさわ
写真上:旧ソウル駅舎
写真中:KTX(韓国高速鉄道、仏TGVの技術導入、最高速度305km/h)とたかぎ主筆
写真下:2014年5月~運行開始したITX-セマウル(主要幹線で運行、最高速度150km/h)